子供の英語教育・英会話、いつから始めるべき?

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子供が英語を習い始めるのは、小さいころから始めた方が有利なイメージがあります。

一方で、「大人になってからでも十分間に合う」、「まずは正しい日本語を身につけるべき」などの意見も聞いたことがあるかと思います。

「本当に英語は小さいころから学習すべきなのか?」、「何歳からがいいのか?」、「母語の日本語には影響がないのか?」など早期の外国語学習は、多くの人が疑問に思うテーマです。大学などの研究機関でも研究が続けられています。

本記事では、科学的な研究のエビデンスを踏まえつつ、「日本で」、「日本人の両親が」、日英バイリンガルの子供を育てたいとして、英会話・英語教育は、いつから行うべきかを考えます。

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明確な答えは存在しない

まず最初に、「英語教育は何歳から始めるべきか?」という疑問について、誰にでも、どんな状況にも当てはまる、単純明確な答えは存在しません。

単純な答えがない原因は、2つあります。

科学的に一般化できる結論は多くない

まず、外国語習得の研究では、科学的に間違いなく分かっている結論は、多くありません。同じテーマの研究でも、結果や解釈にバラつきがあります。

英語教育では「私の経験」や「私の信念」に基づく主張が多く見られますが、科学的な検証がされていない「私の経験」が一般的に当てはまるとは限りません。

子供の状況は千差万別

2つ目は、英語学習を実際にする子供の状況は、千差万別なためです。

ある子供は、大人になってからでも「充分間に合う」かもしれませんし、ある子どもは幼児期から始める必要があるかもしれません。

気持ちよく結論を言い切る「専門家」も見かけますが、どんな状況の子供について述べているのか、何のエビデンスをもとに述べているのか確認してみましょう。

子供の英語教育のゴールは?

「英語学習は幼稚園から始めるべき」、「英語学習はいつからでも間に合う」という両極端な意見がある大きな原因として、議論の前提になる「英語教育のゴール」が全然違うことがあります。

前者は、ネイティブレベル、ネイティブに近いレベルを前提にしていることが多いです。

後者の多くは、明らかな日本語なまりで、たどたどしい英語でも「通じれば」問題ないことを前提にしています。

「コミュニケーションが成立する」程度の英語力は、大人になってからでも習得可能なことは、疑問の余地はないと思います。英語が全然ダメな人でも、英語必須の環境に数か月もいれば、大体話せるようになります。

しかし、「コミュニケーションが成立する」のと、「コミュニケーションで不利にならない」のは、全く難易度が異なります。

当記事では、ネイティブとのコミュニケーションで不利にならないレベルを目指すには、何歳からの英語教育が必要かについて検証します。

そもそも、目指すべき英語学習の到達点は何なのか?ネイティブレベルを目指すべきなのか?については、全く別の議論なので、また別の記事にしたいと思います。

日常的に英語に触れる環境があるのか?

著名な英語習得研究の多くは、アメリカなど英語を話す国に移住した子供を対象にしています。学校など、家庭の外では、全て英語の環境が前提です。

日本語で書かれた記事でも、アメリカでの研究を引用していることが多いです。しかし、アメリカで育った子供の研究結果を、日本で育つ子供に当てはめるのには注意が必要です。

同じように6歳から英語を始めたとして、英語しか話さないアメリカの現地校で育った場合と、日本で週2時間英会話を習うのでは、結論が同じはずがありません。

個人の適性

「私は(私の友人は)、大人になってから英語習ったけど、英語ペラペラ」という主張をする人もいます。

学術的な研究でも、稀にに大人になってから外国語を完璧に習得する人がいることは、報告されています。

しかし、私たちが知りたいのは、「平均的な子供が」何歳から英語を学ぶべきかです。語学の天才や、とんでもない努力をした人の体験談は、参考になりません。

英語学習は早い方が一般的に有利

臨界期(Critical period)とは?

臨界期(Critical period)とは、一定の年齢を過ぎると、あるスキルを学習するのが困難になったり、到達できるレベルが低くなることです。

例えば、ピアノやバイオリンなど音楽は、幼少期から始めないと一流になることが難しいですよね。スポーツも、大人になってから始めても上手くならない種目も多いです。自転車や水泳も、大人になってから始めると、なかなか習得できないことが知られています。

外国語の習得についても、何かしらの臨界期があると考える研究者が多く、「外国語習得の臨界期仮説」と呼ばれています。

ネイティブレベルを目指すなら、目安は6歳程度、遅くても12歳まで

ネイティブレベルの外国語力を目指すなら、習い始める年齢が早いほど有利なことは、ほとんどの研究の一致した見解です。

年齢が遅くなるほど、最終的にネイティブレベルに達する人は少なくなります。具体的に、何歳から外国語の学習が難しくなるのか、何歳までに習い始めればネイティブになれるかは、6歳~12歳程度と、研究によって異なります(高橋基治「第二言語習得研究からみた発音習得とその可能性についての一考察」)。

例えば、以下の研究は、アメリカに移住した中国人、韓国人の子供を対象にしたものです。3-7歳までに移住した子供はネイティブと同程度の英語力を身につけますが、8歳以上になると、移住時の年齢が上がるごとに英語力が下がります。

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America「Economic, neurobiological, and behavioral perspectives on building America’s future workforce」

普通の日本の環境では、幼少期から始めてもネイティブになるとは限らない

親が英語ネイティブでさえも、英語ネイティブになるとは限らない

しかし、6歳までに英語を始めればネイティブになるというのは、あくまでもアメリカなど英語の国に移住して、現地校で育った子供の場合です。

英語ネイティブの家庭でさえも、日本で育つと英語が微妙になる子供はいます。

逆のパターンも同じで、両親が日本人でも英語の現地校で育つと、日本語が微妙になる帰国子女は多くいます。

娘のようにハーフの子は、自然にバイリンガルになれると皆さん思われているようですが、そんなことは決してありません。ママがネイティブならそれで充分でしょ、と思われるかもしれませんが、それでは母語としてマスターするには残念ながら充分ではないのです。私の周りにも子どもに英語で話すたくさんのネイティブママやパパがいますが、ネイティブのように英語を話すようにならない子もたくさんいます。英語は理解できるけど返事は日本語になる子もいます。日本語のほうが彼らにとって楽だからです(これは海外に拠点を移した家族において典型的な傾向だと思います)。

Rare Job「ネイティブママも、子どもと英語に悩んでいる by カリン・シールズ」

日本語の環境で幼児期からの英語教育に効果はあるのか?

幼児期から英語を始めたとしても、週1時間のレッスンでネイティブになると思う人はいないでしょう。

それでは、1日1時間なら?1日3時間なら?「英語を習うレッスン」ではなくて、「英語で何かを学ぶ」ことが必要なのか?英語で会話する友達やコミュニティが必要なのか?

何時間以上、どのような環境で英語に触れればネイティブ並みになるのか?ネイティブ並みでなくても、早期教育の意味はあるのか?私の調べた限りでは、分かりやすい研究結果はありませんでした。

インターナショナルスクールなら英語環境になるが、マイナスの面もある

幼稚園から英語のプリスクールに通い、小学校以降もインターナショナルスクールの場合は、英語圏で育った子供と同じように英語ネイティブになる可能性が高くなります。英語圏で育つ子供のように、学校にいる間は、完全に英語の環境になるからです。

しかし、日本の普通の家庭が小学校からインターナショナルスクールに通うのは、費用や制度の面で難しい点があります。また、海外での子育と同様に、逆に日本語が弱くなったり、日本の常識が身につきにくい、などの不安要素が出てきます。

たぶん東京インターナショナルスクールに普通の日本人家庭の子どもを入れたら、もう5年後には日本語どころじゃなくなりますよ。まず知的なシミュレーションはすべて英語でやることになりますから、その子は日本語脳ではなく英語脳になってしまいます。日本語脳の持ち主と英語脳の持ち主では、どこか空気が違いますからね。日本はとても独自の文化があるし、英語脳の持ち主は日本社会では生きづらくなってしまうんです。まず親が日本語脳の持ち主ですから、親子で話していてもしっくりこない、というような状況に陥ってしまいます。

海外生活サプリ「東京インターナショナルスクール代表 坪谷ニュウェル郁子さん」

必ずしも臨界期までに学習を始める必要はない

上記で紹介したように、英語の臨界期の推定は6歳から12歳程度と幅があります。

その理由の一つは、臨界期を過ぎたからといって、すぐに全員がネイティブ英語の習得が不可能になるわけではないからです。また、どこまでが「ネイティブ英語」かも曖昧です。

臨界期というのは、「ほぼ全ての人が」、「完璧にネイティブな」英語ができるようになる年齢です。臨界期を過ぎると、「平均的に見て」、「段々と」英語の習得が難しくなるだけです。

完璧にネイティブな英語を目指すなら、6歳まで、遅くても12歳までに英語の環境にするのが無難です。しかし、「コミュニケーションで不利にならない」程度にネイティブに近い英語を目指すなら、中学以降でも遅くはないと思います。

私の知り合いでも、大学院から海外の人よりも大学からの人の方が、大学よりも高校からの人の方が、平均的にネイティブに近い英語を話します。

発音(音の聞き分け)の臨界期

外国語の習得は、一般的には年齢が低いほど有利ですが、発音、文法、単語力など、分野によって、年齢の重要性は変わってきます。

最も明確に年齢による違いが出るのが「音韻体系の習得」、つまり発音や音の聞き分けです。

大人になってから英語圏に移住したとしても、ネイティブのような発音になる可能性は低いです。RやLのような日本語にない音は、勉強しても、なかなか聞き分けられるようになりません。

生後10か月ごろから、母国語と他の言語で、聞き取りに差が出始める

著名な言語習得研究者のパトリシア・クール は、生後10か月程度から、母国語にない音の聞き取りに差が出るとしています。

生後6〜8ヶ月の赤ちゃんは、日本語ネイティブ、英語ネイティブでもRとLの聞き取りに差がないのですが、2か月たつと、日本の赤ちゃんは聞き取りの成績が悪くなり、アメリカの赤ちゃんは良くなるのです。英語と中国語の比較でも、同じ結果が出ています。

これは 東京の赤ちゃんと シアトルの赤ちゃんについて /ra/と/la/を聞き分ける テストの成績を示したものです /r/と/l/の区別は英語では大事ですが 日本語では違います 生後6〜8ヶ月の赤ちゃんでは 違いが見られません それが2ヶ月たつと驚くべき変化が現れます アメリカの赤ちゃんは成績が良くなり 日本の赤ちゃんは悪くなります しかしどちらの赤ちゃんも 自分が身につける言語を学ぶ準備をしているのです

TED「パトリシア・クール 「赤ちゃんは語学の天才」」

発音(音の聞き分け)の臨界期は、早くても6歳

このパトリシア・クールのTED TALKプレゼンは、色々なところで取り上げられていて、「赤ちゃんのころから英語を聞かせるべき」のような説明をしている記事も見かけます。

しかし、パトリシア・クールは、「生後10か月までに始めないとネイティブにならない」とは言っていません。

あくまでも、英語を聞いている子供と、聞いていない子供で、差が付き始めるのが10か月ということです。生後10か月以降から英語を習った子供が、ネイティブの発音になるかは、別問題です。実際に、同じプレゼンの中で、「こどもは7歳になるまで 語学の天才なのです」と述べています。

発音・音の聞き分けの臨界期については複数の研究があり、研究によって6歳~12歳程度と結論が分かれています。具体的な年齢については不明ですが、6歳未満ということはなさそうです。

これらの見解は、いずれも発音面に関しては目標言語に触れた時間、すなわち、第二言語環境における滞在時間(length of stay)よりも、その環境で言語学習を始めた年齢(age at arrival)のほうが、習得結果を左右するとし、臨界期の存在を肯定していると言える。
その具体的な年齢については、6 歳(Asher & Garcia 1969)まで、という説や 12 歳前後(Oyama 1976; Scovel 1988)など研究者によって幅がある。

高橋基治「第二言語習得研究からみた発音習得とその可能性についての一考察」

映像や音楽で英語を聞かせておけばOKというわけではない

両親が日本人で日本で育てると、自然に環境で英語に触れさせるのは実際のところ難しいです。確実な方法は、英語のプレスクール、インターナショナルスクールに入れて、強制的に英語の環境にすることです(お金がかかり、日本語が弱くなるかもしれませんが)。

そこまでしない家庭の場合、手軽な方法として紹介されることが多いのが、映像や音楽で英語を聞かせることです。例えば、日本語の番組の代わりに、ディズニーやセサミストリートなど英語の番組を見せることです。

上記のパトリシア・クールのプレゼンでは、ビデオで外国語を聞かせることは、(少なくとも音の聞き分けの点では)意味がないという研究結果が紹介されています。

アメリカの子供に対面で中国語を話すと中国語の聞き分けができるようになるのですが、同じ内容をビデオを通して聞かせても、全く効果がなかったのです。その原因は、赤ちゃんが音を学ぶきっかけとして、「本物の人間の存在」が必要としています。

この実験から示唆されることは、「ディズニーの動画を見せても、英語の音の学習にはならない」かもしれない、ということです。

TED「パトリシア・クール 「赤ちゃんは語学の天才」」

まとめ

・「子供への英語教育は何歳から始めるべき」に明確な答えはない。

・「何歳から始めるべき」かは、どの程度ネイティブに近いレベルを目指すかで変わる。

・ネイティブレベルを目指すなら、目安は6歳程度まで、遅くとも12歳までに「英語の環境で」英語を学び始める。

・普通の日本の環境では、幼少期から始めてもネイティブになるとは限らない。

・インターナショナルスクールなら英語環境になるが、日本語の習得などの点で、マイナスの面もある。

・映像や音楽で英語を聞かせるだけでは、英語の音は学べない。

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