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どこでも働けるグローバル人材なんていない

海外就職をしたい人は、「グローバル」人材になりたい人が多いと思います。

狭い日本ではなく、世界を股にかけてビジネスをする、世界のどこでも生きていける。そんなグローバル人材に漠然とした憧れを持っている人は多いでしょう。

ところで、グローバル人材、グローバルな生き方って何なのでしょう?

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グローバル人材とは、英語で外国人と高度な仕事ができる人材のこと(一般のイメージでは)

グローバル人材とは、世界的な競争と共生が進む現代社会において、日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間であり、このような人材を育てるための教育が一層必要となっている。

2011年 産学連携によるグローバル人材育成推進会議「産学官によるグローバル人材の育成のための戦略」

政府の会議資料の定義です。大変高尚ですね。。。しかしながら、この定義は「グローバル人材」が実際にどのような文脈で使われているかではなく、政府の思う「あるべきグローバル人材像」だと思います。以下、グローバル人材という言葉がどのようなイメージで使われているか考えます。

グローバル人材の必須条件①:高い英語力

異なる言語、文化、価値を乗り越えてコミュニケーションするには、まず語学力が必要です。日本語だけだと通訳がつくか、相手が日本語を話せないと外国人とコミュニケーションできません。さすがに、日本語しか話せない人をグローバル人材とは言わないと思います。

政府の定義には書かれていませんが、語学とは英語のことです。例えば、日本語と中国語のバイリンガルだとしても、英語が話せなければ、日本、中国以外の大部分の人とはコミュニケーションできません。日本人、中国人としか話せない人をグローバル人材とは呼ばないと思います。英語であれば、世界の多くの国でコミュニケーションすることができます。

コミュニケーション能力の観点では、グローバル人材とは、英語で外国人とコミュニケーションができる人材と言えます。他の言語もできれば、プラスでしょうが、英語以外の言語はグローバル人材の必須条件ではありません。実際に自分で「グローバル人材」と名乗っている人は、日本語と英語しかできない人も多いです。逆に、外国語が話せても、英語ができなければ、(日本の世間的なイメージにおいては)グローバル人材とは言えません。

グローバル人材の必須条件②:外国人と高度な仕事ができる

グローバル人材の条件は、コミュニケーション能力だけではありません。例えば、学生で英語ペラペラの人もいるでしょうが、(まだ)グローバル人材とは言えないと思います。英語の先生もグローバル人材とは呼ばれません。グローバル人材は、「海外、外国人との仕事」の文脈で語られるからです。それも、高度な仕事です。外資などには、一般事務で高度な英語力を持っている人がいますが、一般的にはグローバル人材とは呼ばれません。

まとめると、一般的なグローバル人材のイメージは、「英語で外国人と高度な仕事ができる人材」だと思います。

5か国語ぺらぺらも、ハーバードMBAも、マッキンゼーも、ゴールドマンサックスも、真にグローバルではない

筆者は、日本語ネイティブ、アメリカの大学院を卒業し、台湾で中国語で仕事をしていました。完璧ではないですが、英語と中国語はビジネスレベルだと思います。グローバル人材の代名詞のように言われるMBAも持っています。世界60か国以上旅していますし、複数の国に住んでいました。日本人の中では、「グローバル度」は高いはずです。

MBA卒業生でも、完全に英語の環境で仕事ができる人は少ない

しかし、私がグローバルに世界どこでも働けるなんてことはありえません。

まず、私はアメリカ、イギリスな英語圏の先進国で働くのは難しいです。何かしらの仕事は見つかると思いますし、ビザも取れるかもしれません。しかし、面白い仕事、条件の良い仕事を見つけるなら、東京の方が圧倒的に有利です。仕事の満足度を落としてまで、アメリカやイギリスで働きたくありありません。

私の英語はビジネスレベルではありますが、ネイティブレベルには、ほど遠いからです。職種は、企画・マーケティングなどビジネス系のソフトスキルの仕事ですので、言語力が非常に重要です。アメリカで、英語ネイティブのMBAの人たちと同じポジションを争って勝てる気はしません。私だけではなく、多くの日本人MBA卒業生も同様で、卒業後に海外で就職する希望があっても、結局日本に帰ってくる人も多いです。

ハイスぺ英語ネイティブ人材でも、英語コミュニティの外では仕事はできない

それでは、英語のがネイティブレベルに近く、高度な技術者や金融関係など、専門性も高い場合は、どうでしょうか?そのような人は、日本、英語圏、どちらでも高いレベルで働くことは可能です。私の知り合いでも、そういう「グローバル人材」はけっこういます。以下、ハイスぺ・グローバル人材と呼ぶことにします。

それでは、ハイスぺ・グローバル人材は、どこでも働けるでしょうか?確かに彼らが働ける場所は広いです。世界のほとんどの国で働くことは可能です。

しかし、ハイスぺ・グローバル人材が働けるのは、世界中の「英語コミュニティ」、広く言えば外国人コミュニティです。日本でも外資や一部の日系グローバル企業に外国人は在籍していますが、日本の伝統的な会社で日本語なしで働くのは困難です。

外国人が海外で働くときに、外国人コミュニティの中でしか働けない現象を、英語では「the expat bubble」と呼びます。Bubble (泡)に閉じ込められているExpat (外人)ということです。

ローカルな環境で働くには現地語が決定的に重要

外国人コミュニティの外で働きたいと思えば、英語力も、高度な専門知識も、十分な条件ではありません。決定的に重要なのは、現地の語学力です。日本なら日本語。中国なら中国語です。

私のMBA同窓の外国人から、日本で働きたいという相談を受けることがあります。彼らは、英語ネイティブで専門性も高いハイスぺ人材です。英語圏であれば、どこの国でも働けます。しかし、日本語ができない場合、日本で仕事を見つけることは難易度が高いです。日本で純粋に英語だけで仕事をできる職場は非常に少ないからです。また、見つけられたとしても、彼らが働くのは外資やグローバル志向の日系企業であって、普通の日本の会社ではありません。

私は新卒の時に、台湾企業の本社に就職しました。それは私が英語力があるからでも、専門知識があるからでもなく、中国語が流暢だったからです。日本人向けの台湾の求人サイトにも、中国語が話せないとご紹介が難しいと掲載されています。

どんな環境でも働ける「グローバル人材」像は幻想

本当の意味で、どんな国でも働ける人いません。英語ネイティブ、ハーバードMBA、マッキンゼー出身の人でも、中国語なしで中国の田舎で職を見つけるのは困難です。

世間で言われている「グローバル人材」とは、日本および国外の「英語コミュニティ」で仕事ができる人材です。「グローバル」が文字通り「世界どこでも」、「世界の誰とでも」という意味なら、真のグローバル人材は存在しません。「英語コミュニティに限り」のカッコつきならば、高度な英語力と、高度な専門知識を併せ持つ人は、世界のどこでも働けます。

語学力を維持するのは大変

それでは、「5か国語に堪能」のような人はどうでしょうか?例えば、日本語、英語、中国語、韓国語、タイ語ができる人は、英語コミュニティ+日本、中国、韓国、タイで、高いパフォーマンスで働けるのでしょうか?

3カ国語でさえもビジネスレベルを維持するのは困難

私は疑問に思います。一部の天才や、環境に恵まれている人を除いて、一般の人が多数の言語をビジネスレベルで使いこなすのは、現実的でないと思います。私の周りには帰国子女など語学が堪能な知り合いが多くいますが、3カ国語でさえも、高いレベルで使える人はまれです。

例えば、私は日英中の3カ国語のトリリンガルです。学生の頃は、フランス語、イタリア語も日常会話くらいできましたし、韓国語、スペイン語、ポルトガル語も若干できました。しかし、日英中除いて、基本的な単語のレベルで完璧に忘れました。なぜなら、使う機会が全くないからです。語学は使わなければ、確実に忘れます。

中国語については、台湾で働いていたときに、中国語で事業企画や商品企画を担当していました。その当時は、難しい単語も使っていましたが、日本に戻ってからは中国語は弱くなりました。日常会話はともかく、抽象的な単語は使う機会がないからです。ある程度のレベルまでマスターすると、発音や文法はなかなか忘れないですが、ビジネスレベルだと、普段からビジネスで使っていないと厳しいです。

語学力のメンテが難しいのは、語学は使わなければ錆びますが、時間は有限だからです。ある言語を使う時間が長くなれば、必然的に他の言語を使う時間は短くなります。使う時間が短くなると、語学力は衰えます。

日本語ネイティブでも日本語の訓練は必要

日本語さえも習得には訓練が必要が必要ですし、使っていなければ弱くなります。帰国子女や海外での生活が長い人には、日常会話は普通だけど、難しい話になると日本語が出てこない人を見かけます。会話は問題なくても、読み書きは難しい人も多いです。

多くの日本人は、日本人が海外で育てば、勝手にバイリンガルになると思っているようです。私も帰国子女と知り合う機会が少ない頃は、そう思っていました。

確かに、家庭の環境が日本語で、学校や職場が英語であれば、日英のバイリンガルになるのは簡単です。しかし、それはあくまでも日常会話レベルです。

家庭で日本語を使うだけでは、高度な日本語、特に読み書きを習得することはできません。高度な読み書きもできる帰国子女は、現地の学校に加えて、日本語の補習校などで日本語を自習しているのです。

現地の環境では、日本語の読み書きの能力は役に立ちません。学科の勉強をしたり、スポーツをしたりした方が、よっぽど役に立ちます。「日本人だから」という理由だけで継続して学び続けるには強い意志が必要です。同じ家庭で育った兄弟でも、1人の日本語は完璧で、もう1人は日常会話しかできないケースもよく聞きます。

漠然とグローバルに憧れないで、どの言語で仕事したいのか意識する

どこでも働けるグローバル人材というのは、現実的でないこと、語学力のメンテは大変という話をしました。グローバルな働き方をしたいなら、漠然とグローバルで働こうと憧れるのではなく、どこで、何の言語を使って働くのか考えておくべきです。

① 日本語+英語で海外または日本で働く

母国語の日本語に加えて、英語を習得することで、日本または海外で、英語を使って外国人と仕事をします。海外と日本をつなげる仕事です。一般的な「グローバル人材」像で、最も目指している人が多いパターンです。

日本国内だと、外資や日系での海外関連の仕事が該当します。国外では、逆に日系の支社、外資の日本担当の仕事が該当します。英語圏の国との仕事、英語圏以外の国に住んでいる場合も、英語で仕事する限りは、日本語+英語の仕事です。

日本語+英語の場合、英語能力が高いほど活躍の場は広がります。国内だと、外資で働く場合に、英語力は高ければ高いほど有利です。英語力ではなく、「仕事力」が大事という人もいますが、外国人が絡む仕事では、英語力も仕事力の一部です。外資では意思決定者が外国人なので英語でのコミュニケーション能力は決定的に重要です。

同じように日系で海外に営業するときも、英語力の差は、提案力の差につながります。英語は通じればOKというのは、英語にコンプレックスを持っている大多数の日本人には耳障りが良い主張です。しかし、日本語+英語の仕事で活躍したいなら信じてはいけません。もちろん、伝える内容は重要ですが、伝える手段の英語も大切です。

国外では、ビザが緩く、日系の募集が多い東南アジアでは、それほど高い英語力は必要ありません。現状では、TOEIC 700点くらいで十分なようです。日本語ネイティブ、日本での職務経験がある人を雇うニーズが高いからです。一方、ビザが厳しく、働きたい人も多いアメリカやイギリスのような英語圏の先進国では、英語の要求レベルは高くなります。高度な専門職でなければ、ネイティブに近い英語力でないと厳しいです。

② 英語で海外で働く

ずっと海外の英語圏で働きたいのなら、日本に関係ない仕事を目指すべきだと思います。日本語+英語の仕事だと、日本語の能力が活用できるので、外国人に対して有利になります。一方で、日本に関連する仕事に制限されてしまいます。最初の仕事は日本関連だったとしても、徐々に日本以外のことを専門にした方が良いです。

世界の経済に占める日本の比率は、下がり続けており、これからも下がり続ける見込みです。日本の人口は急速に下がっていくからです。PwCの予測によれば、2050年に日本のGDPはインドネシアやブラジルよりも低い8位になります。

経済規模が小さくなれば、世界での日本関連の求人は少なくなります。日本のGDPが8位になるということは、アメリカ、EU、中国などの巨大市場以外の「その他の国」になるということです(今も、そうなりつつある)。その他の国の専任の担当は、普通雇いません。

アメリカなど英語圏の国で学ぶ日本人以外の留学生の多くは、留学先の国で、現地人と同じように働くことを目的にしています。母国に関連する仕事をしようとも、母国語を活かそうとも思っていません。アメリカで自分の国に関連した仕事があるわけでもないし、母国よりもアメリカの方が良い仕事に就けるからです。

日本人も本気で英語圏で生きていくつもりなら、日本語力や日本人であることの条件には頼らずに、英語だけで現地人や他の国の人と就職市場で戦う覚悟が必要です。

日本に関係のない仕事をする選択肢について、こちらの記事もご参照ください。

日本とは関係ない仕事で海外就職をする選択肢
日本とは関係ない仕事で海外就職をする選択肢
海外就職を目指す人の動機で「日本と海外の架け橋になりたい」という趣旨の言葉をよく聞きます。しかし、個人が海外で働くときに、日本の国を背負って就職する必然性はありません。日本と関係ない仕事で海外就職する選択肢を解説します。

③ 日本語+英語+現地語で日本または海外で働く

英語があれば、どの国とも仕事をすることはできます。現在は、どの国でも英語ができる人はいるからです。

しかし、本気で特定の国にコミットする場合、特定の国に住み続けたい場合は、現地語の習得は必須です。英語圏以外の国では、英語はあくまでも外国語です。

外国人が日本市場のマーケティングを担当をすることを考えてみてください。バイリンガルの同僚など他の人の助けをかりれば不可能ではないですが、大きなハンデを負うことは明白だと思います。

市場を知るための情報源、例えばテレビやネットは、すべて日本語です。普通の消費者にインタビューしようとすれば、英語で自在に答えられる人は限られます。英語に翻訳しようにも、細かいニュアンスは翻訳しきれません。同じように、日本人が英語だけで非英語圏の担当をするということは、極めて限定された情報だけで市場を見ているということになります。

非英語圏で外国人として働く場合、現地語は重要ですが、英語も必須です。現地でのコミュニケーションは現地語ですが、他の国とのコミュニケーションは英語だからです。日本相手のコミュニケーションもです。例えば、現地の会社で働いていて、日本の会社が取引先の場合、打合せは通常英語です。参加者全員が話せる共通言語が英語だからです。

日本語+英語+現地語で働きたいなら、その言語や国へのコミットが必要です。既に説明しましたように、語学力のメンテは大変です。現地語を使う時間が増えるということは、日本語や英語を使う時間は減るということです。日本語+英語で仕事をしている人と比べると、日本語+英語の能力では不利になりがちです。将来、日本語+英語の環境で働きたいなら、中途半端に現地語に時間を投資すべきでないと思います。


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