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ニッポンが世界に誇る技術力の将来は暗い

日本では、著名なコンサルタントや学者が「日本の技術力は素晴らしいが、経営がダメだ」とか「技術力では勝っていたのに、プラットフォーム化で負けた」などと、日本の技術力が素晴らしいことを前提に議論をすることがあります。特に、中国や韓国と比較して、日本の技術力に疑いを持っている人は少ないようです。

私は、そうは思いません。現在はともかく、ニッポンの技術力の将来は暗いです。20年後に日本が中国に技術力で勝っている可能性は極めて低いと思います。

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技術力の源泉は人

当たり前ですが、技術力を支えているのは人です。一人一人の優秀な技術者が集まり、技術力の高い会社、技術力の高い国が成り立っています。

技術者は様々な年齢の人がいます。ベテランの方が一般的には技術力が高いでしょう。一方、若手は現状ではベテランには勝てないかもしれませんが、将来的に新しい技術を生み出す能力は高いはずです。

新しい優秀な技術者が入ってこない会社があれば、どうなるでしょうか?しばらくは、ベテランの技術者と、会社に蓄積されたノウハウで問題ないかもしれません。しかし、どんな技術もいつかは陳腐化します。新しい技術者が新しい技術を生み出し続けなければ、技術の会社は存続できません。国も同じで、新しい優秀な技術者を供給し続けてこそ、技術立国は成り立ちます。

今、日本の技術が中国や他のアジアの国に対して優位性があるとすれば、ベテランの力とノウハウの蓄積です。しかし、将来の技術の発展に重要な優秀な若手の供給では、勝っているとは思えません。

日本は理系教育で中国に圧倒的に負けている

理系人材の供給数の点で見ると、2016年の中国の理系(STEM学科)の卒業生は、470万人で日本の24倍強です(World Economic Forum, Human Capital Report 2016)。STEM学科とは、Science, Technology, Engineering, Mathematicsの略で、平たく言うと理系です。

人材の質の点では、コンピュータ学科(Computer Science)の世界大学ランキングで、中国は精華大学が2位に入っている他、トップ20に4校入っています(U.S. News Best Global Universities 2017)。その他、アジアだと、シンガポール国立大学が8位、香港城市大学が9位、韓国のKorea Advanced Institute of Science and Technologyが35位、台湾の台湾大学が39位です。日本のトップは東京大学の67位です。他校は100位にも入っていません。

工学(複数分野のEngineering)では、中国の精華大学が1位で、トップ20に中国が6校入っています。日本のトップは東京大学の51位。この分野でも東京大学よりランキングの高いシンガポール、韓国、台湾の大学があります。

毎年、中国は、日本の20倍以上の理系人材を送り出しています。しかも、そのトップの大学の評価は、日本の東大や東工大より高いのです。更に自国の大学だけでなく、欧米のトップ大学で学んでいる中国人の数も日本人と比べて遥かに多いです。IT、テクノロジー企業の最重要資産が「人材」であることを考えると、中国が日本よりも圧倒的に有利なことは疑いの余地がありません。

日本には憧れのテクノロジー企業が少ない

私が働いていた台湾では、最優秀の学生はコンピュータ、電子工学など、社会で需要のある分野の理系学科を専攻して、テクノロジー企業に就職していました。一流のテクノロジー企業で技術者として働くことは、社会的に最高のステータスで、収入も高いと考えられているからです。理系の適性がある優秀な学生が文系学科に進んで、官僚になったり、商社や広告代理店に勤めたりするのは、台湾では考えにくいことです。中国も理系の学科のランキングの高さを見ると、優秀な学生が理系を選んでいることが分かります。

日本では、優秀な学生が法律や経済など文系学科を選ぶ割合が高いです。学部別のセンター試験の得点や偏差値を見ると、同じ大学では法律や経済の方が理系学科よりも難易度が高いことが多いです(受験科目が異なるので単純な比較はできませんが)。また、理系を学んでも、技術者にならずに、外資のコンサルティングや金融の会社に就職することがカッコいいとされる風潮もあります。

日本の優秀な学生が理系、技術者を目指さない一因は、日本に誰もが入りたいと思うようなテクノロジー企業、技術者が高収入が期待できそうな企業が少ないことだと思います。高年収の会社ランキング、入りたい会社ランキングでは、商社、金融、マスコミ、広告代理店などが並んでいます。企業の時価総額のランキングでも、トヨタなど一部の自動車メーカーを除いて、ほとんどがテクノロジーと関連しない企業です。

アメリカだと、時価総額のトップは、Google、Apple、Facebook、Amazonなどテクノロジー企業がずらりと並びます。収入が高く、社会的なステータスも高いので、入りたい会社ランキングで上位に入っています。中国、韓国、台湾でも、影響力のある会社、勢いのある会社は、テクノロジー企業です。日本のように、優秀な学生が入りたい企業が商社や広告代理店というのは、「技術立国」の国の中では極めて異質です。

日本では起業で一獲千金の夢も小さい

技術者が社会的、金銭的な成功を得る方法として、高収入の企業に就職する以外に、自分で起業する道があります。しかし、起業の成功例もアメリカや中国に比べて圧倒的に少ないです。

大手会計事務所 Ernst & Youngのリサーチによれば、ベンチャー投資額は、アメリカ 723億ドル、中国 492億ドル、インド 80億ドル、イスラエル 26億ドル、日本は、たったの8億ドルです (EY global venture capital trends 2015)。

大成功の事例も少ないです。TechCrunchによれば、2017年5月時点で、10億ドル以上の評価額の未上場企業「ユニコーン企業」は世界で221社。国別では、アメリカ 114社、中国 62社が圧倒的に多く、3位がインドの 8社。日本はたったの1社(メルカリ)です。

人材の面で見ると、日本の技術、日本の技術者の供給は、既に悪循環になっていると思います。高収入、社会的ステータス見込めない会社や業界には、優秀な人材は集まりません。国全体で見ると、技術者を志望する若者自体が減ります。優秀な人材が集まらなければ、新しい技術は生み出されず、収益を上げることができません。収益が低くなると、更に給与水準や社会的ステータスが低くなり、優秀な人材は、ますます技術者を目指さなくなります。

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